本日の映画
みなさんコロナ禍ですけど生き残ってますか?私はロンドンで割と楽しく生きてます!孤独だけど!
ラジオを毎日更新しているのでこちらで生存を確認していただければ幸いです。
さて、本日は恩田陸さんの同名小説を原作とした『蜜蜂と遠雷』についてお話していきます!
あらすじ
最愛の母親を亡くしたことがきっかけで熱中していたピアノから離れてしまった主人公・栄伝亜夜(松岡茉優)は大学生になり、8年ぶりにピアノコンクールに参加することとなった。恩師から言われたこととはいえ、気乗りしない亜夜だったが、コンクールで旧友のまーくんことマサル・カルロス・レヴィ・アナトール(森崎ウィン)と再会するのだった。
高島明石(松坂桃李)もまたこのコンクールに参加する一人だった。コンクールに参加する多くが音大生であったが、明石はすでに妻も子供もいる社会人であった。彼は才能にあふれた”金持ち”に対して、自らのような”生活者”の音楽を届けたいという意思を持って参加していた。
様々な思いが交錯する子のコンサートだが、今回の優勝はマサルで間違いないとだれもが思っていた。しかし、ある少年の登場でその予想は一変する。その少年とは無名の新人風間塵(鈴鹿央士)だった。彼の演奏スタイルは圧倒的で、それがゆえに審査員も評価に困るほどだった。
才能と感性と目標とトラウマと。音楽を続けるのはなぜなのか。誰のために、なんのために。
詳しくはこちらをご覧ください。
感想
この映画をスクリーンで観られなかったことを私は一生後悔する
この映画私本当にめちゃくちゃ観たかったんです!なんてったって俺たちの森崎ウィン!!!!森崎ウィンが!!!!!!!!邦画に出るんだぞ!!!!!!森崎ウィンを知らない?!お前どこのマグルだよ*1?!ご存じでないという方はぜひとも『レディ・プレイヤー・ワン』をご覧くださいね。
もうこれは絶対に劇場で観てやるぞと意気込んでいたんですが、公開日がまさかの10月。そう、私は9月に渡英する予定だったので、10月公開の今作を劇場で観ることができなかったんです!!!!大ショックを受けながらとりあえず私は原作小説の『蜜蜂と遠雷』を買うことに。
そんな諦めで買った原作小説、これがすごい!さすが直木賞と本屋大賞を獲った小説はすごい!!面白いとしか言いようがないというか、面白すぎて全部読んでしまうのがもったいないと思わされるほどの出来でした。
『蜜蜂と遠雷』ようやく本戦手前まで読んだのだけれど、これはすごいね。読書体験じゃないよ、もう目の前で登場人物たちがピアノを弾いていたし、頭の中に直接映像が流れ込んでくるとはこのことだと思った。これは映像化不可能と言われるわけよね…。映画がとっても楽しみになった一方で不安だ。
— 🕷下呂あやめ🏳️🌈Lockdown中の英国よりお届け中 (@slhukss1) November 28, 2019
そう、面白すぎて「こんなもの実写化できるのか…?」と心配になってしまうほどに。ぜひまだ読んでいないという方は読んでみてください。私は久々にこんなに感動するような読書体験をしました。ちなみに最近で一番絶望した小説は『屍人荘の殺人』です。あれ絶対許さん。末代まで呪ってやる。もし『屍人荘の殺人』の私の怒り狂った感想を読みたいという方がいらっしゃいましたら以下のツイートのスレッドで書いているのでそちらを見てみてください。
ごめんだけど『屍人荘の殺人』面白くなさすぎて金返してほしいと思ったな なんだこれ
— 🕷下呂あやめ🏳️🌈Lockdown中の英国よりお届け中 (@slhukss1) December 6, 2019
さて、そんなこんなで年も明けて自宅待機の日々が続く4月に映画『蜜蜂と遠雷』がディスク発売、レンタル開始に!これは観ないと!というわけで早速Amazonプライムでレンタルしました。
ああ、なんて便利な世の中なのかしら。ディスクを持つ必要がなくて、データさえあればレンタルができてしまうなんて!海外にいてもラグなしでレンタルができるのは大きいです。本当にありがとう、ありがとう…。
さて、そんなわけで早速観てみたわけですが…これが本当にとっても美しい映画でした。本当に生まれて初めて満天の星空を見たような、そんなすがすがしい映画になれる素晴らしい作品でした。
しかしまぁこの作品を劇場で観られなかったのが本当にくやしい!悔しい!悔しすぎる!もうこの映画を劇場で観られなかったことを後悔しない日がこれからの私の人生において1日もないと思うくらい悔しかったです。つらい。また劇場公開してほしい。
なんでこの映画を劇場で観られなかったことをここまで後悔するのかというと、この映画はまさに映画に囲まれるというか、映画に浸かるというか、とにかく映画に全身を捧げてさらに面白くなる作品なんですよ。なのでスマートフォンとかタブレットとかPCとかの小さな画面でもなく、バカみてえなクオリティのスピーカーじゃなくてですね、映画館のどでかいスクリーンで、大音響で、映画に飛び込んでいって面白さの波にのまれてなんぼの映画なんです!!!
でも、だからといってディスクで観ても面白くないのかというとそれも違うんです。私はこの映画が面白すぎて腰が抜けたんです。本当に。立ち上がろうとしたら腰が抜けてこけたんです。そんなあほなと思うかもしれないんですけど、マジの話なんで信じてください。そんなわけでここからは私の好きな『蜜蜂と遠雷』のポイントをお話しさせてください!
とにかく全編にわたって綺麗
この映画に対して「面白い」「楽しかった」という感想よりも強く言いたいのが「綺麗」だということです。本当にすごい綺麗なんです。語ってもしょうがないから観てほしいです。観て圧倒されてほしいんです。
私は松岡茉優さん演じる亜夜が1人で夜の海辺を歩くシーンが美しすぎてそこのシーンだけで泣いてしまったんですよね。しかもその美しいシーンが美しいだけじゃなくて、亜夜の心情を何も語らずして観客に「ダイレクト」に伝えてくるんですよね。もうそれが映画として素晴らしすぎてなんでこんなに完璧なんだこのシーンは…!!!このほかにもハッとさせられるシーンがたくさんあるんです。
source:https://ontomo-mag.com/article/playlist/mitsubachi-to-enrai-playlist/
この亜夜と塵のボロ倉庫での連弾が本当に素晴らしいんです…。美しいのです。月明かりにだけ照らされているピアノを二人がワクワクしながら弾くんです。そして天才にしかわからないこの調和を目の当たりにしてしまうという体験ができるのです。二人がだんだん盛り上がってくるのがまさに「だんだん」とわかってくるそわそわ感とか、塵と亜夜のハーモニーが絡み合っていくのがなんだか気持ちよくなっていく感じとか…。とにかく美しいのです…。こんなの絶対観てほしい…!!!
無駄セリフが淘汰された美しさ
邦画の駄目なところとしてよくあげられるのが「全部セリフで説明してしまう」ということです。芸人さんのコントじゃないんだからそんな全部セリフで説明してしまうことないんですよ。映画なんで。
なのですが、この『蜜蜂と遠雷』はセリフが必要最低限なのです。普通ですよ、普通例えば誰かの演奏を聴いているシーン、ピアノを弾いているシーンに登場人物たちの心情がオーバーラップすることがありますよね。結構そういう手法が見られると思うんですが、この映画の主役はピアノの演奏なんですよ。なので、その主役が「喋っている」ときにほかの登場人物がセリフをかぶせることはないんです。ピアノの演奏を単独でそのまま楽しめというグーパンが映画全体から繰り出されるわけです。
もうそんなすばらしい右ストレートを食らったらもうぶっ飛ばされちゃうでしょ。そしてもう私の頭の中のレフェリーが完全にもう私の負けを伝えてるんです。そらそうです。こんな綺麗な右ストレート食らわされたら完敗です。
一切に妥協がないという本気さ
原作を読んだときに私が思ったのは、「あ、この話実写化したら絶対にどこかに”妥協”が出てくる」だったんですよ。
例えば審査員のほとんどは外国人なのですが、日本人キャストに切り替えられちゃうんのかな、とか、あと英語の発音はめちゃくちゃ悪いままにされちゃうのかな、とか、あとキャストの方はピアノ弾いてるふりなのかなとか…。とにかく実写化した時に普段の邦画の製作会社だったら諦めそうな要素が満載なんですよね。
ところがびっくりこの映画、とにかく本気なのです。まずマサル役に森崎ウィンさんを当ててくる本気っぷりです。確かに原作を読んだときにマサルはもっと大柄でもっと欧州の顔立ちなのだろうな、とは思ったのですが、マサルの王子感と英語スキルと、そして品の良さを表すには森崎さんがまさに適任!そしてなんといっても突然現れた謎の天才ピアノ少年役に新人の鈴鹿央士さんを当てるすごさよ…!!!メインとなる4人のキャストのうち1人が名前も知らない新人ですよ!?普通ちょっと観に行くのためらう要素ですよそんなもの!!!それを風間塵にピッタリだからという理由で新人を起用するなんてすばらしすぎる!!!そしてその鈴鹿さんの演技がマジで「塵じゃん!!!!!!」以外の何物でもない演技でこれでさらにビビり倒す!!!!すげぇ!!!!塵って本当にいたんだ…!!!!!!!
そして私が推したいのは斉藤由貴さんっすね~…。斉藤由貴さんほんとすき…。「お母さん、娘をやめていいですか」の斉藤由貴さんが本当に好きで、そこから私は斉藤由貴さんのことが好きなんですが、あ、ちなみに「オカムス」はマジでやばいホラードラマなのでマジで超お勧めです。NHK本当にキレッキレだなって感心しました。
もうその斉藤由貴さんのたたずまいの何から何までが「そ、それだ~~~!!!!!」としか言いようがないんですよね…!!!何がってとにかくこの映画キャスト陣が役に対して実在感を与えているところがすごいんですけど、斉藤由貴さんのマジでこんな人いそう感が群を抜いてやばいんですよ!静かな演技をされてるはずなのに彼女の感情が伝わってくるっていうか、もうねあっぱれ斉藤由貴。だいすき。国宝。だいすき。
そんでそんでさらにすごいのが衣装よ!衣装がもうチョイスが加点式で30億点なんですよ。とくに松岡茉優さんの演じる亜夜の衣装がよいのです。この映画、原作小説が結構ボリュームがあるので、削れるところは削ってあるので、説明できないところは何とかして映画だからできる方法で伝えているんですが、衣装がになっている点がでかい!!!すき!!!!!あの母親を亡くしている亜夜の他人との断絶を青色の分厚いコートで表してんのかなとか、そんでそのコートがでっかいから亜夜がまだ「母親を亡くした少女」というままでいるのを表しているのかなとか思うとなんてすばらしいんだ『蜜蜂と遠雷』~~~!!!という感想しかあげられないんですよ!!!
あと個人的には松坂桃李さんにね、すごいって言いたい。いやもう彼はよく自分でも演技が大げさになりがち(東映スーパー戦隊出身の性(さが))と言っているんですが*2、今回の映画ではそんなに大げさになってなかったよと!むしろ実在感すごすぎて既婚者・子持ちの役が自然すぎてちょっと夢女子入ってる私は泣いたよと伝えたい。
*打消し部について、こちらの部分が誤解を招くため訂正を願うというコメントをいただいた関係で脚注部に追記いたしました。
まとめ
ほんとに伝えたいのは「観て」「聴いて」「溺れて」ってだけです!本当にすごくよかったです、この作品…!!!!こんなに高いハードルをいともたやすく(ではないのだろうけど)超えていくこの製作陣、キャストの皆さんに拍手!!!!帰ったら絶対円盤を買います!!!!!フィジカルで持っておきたい一本です!!!!!!!!
しかし、やはり今作で圧倒的な存在感を放つのは新人の鈴鹿さんでした。こちらのインタビューであの演技の化け物(と私は思っている)の松岡茉優に「セリフを自分が言ったことみたいに言える」と評価されている通り、鈴鹿さんのシーンはドキュメンタリーを見ているようなリアルさがあるんですよね。本当に風間塵という少年なのかも、と思わされます。風間さんと是枝監督のタッグ観た過ぎない…???????是枝さん頼む……。
そんなわけで本当に大!満!足!の一本でした!久々にこんなに映画に胸を打たれてしまいました。やっぱり映画っていいですね。
*1:
*2:知らない方はいらっしゃらないとは思いますが、松坂桃李さんは約10年ほど前に「侍戦隊シンケンジャー」という作品で俳優デビューされているので、演技の基礎がスーパー戦隊時代に教わったもので構成されているとのことでした。
【2020年4月26日追記】
熱心な松坂桃李さんファンの方からそんな発言は元も子もないので消してくれというご意見をいただきました。確かにここの記載は過言がすぎました。大変失礼いたしました。ご指摘にもありました通り、「シンケンジャー」時代の癖がたまに出てしまうという発言が過去にあったという話でした。
失礼いたしました。ただ、私は個人的に松坂桃李さんの演技はうまいけど「くどいな」と思うことがあります。でもそれは嫌いなわけではないし、個人的には彼の味だと思ってるんですが、そのコアは「シンケンジャー」の時に経験したことが影響しているのかな、とも思っています。
もちろん今や10年のキャリアを持つ俳優さんで、日本アカデミー賞主演男優賞まで獲る俳優さんですので、それ以外にもさまざまな演技経験をされて今があるのは重々承知しているんですがね。私は東映特撮ヲタクだからどうしてもここにルーツがあってほしいとヲタクだから…クソデカ感情持ち合わせてるから思っちゃうんだよね…。厄介ババア…。
にしてもこういうご指摘くださる方のコメントってブログの向こう側に人がいることをよくわかってないんだろうなっていうテンションの方が多くてちょっと疲れます。今回は、私の至らなさが原因とはいえ、さすがにもう無理だ、と思ってしまいました。
そのため、今後はコメント欄は完全閉鎖します。これを書いているのも一人の人間なのだということを理解していただければと思います。私を傷つけてストレス発散させたいんじゃないか、と勘繰ってしまってつらいので。いつもコメントくださっていた方々には申し訳ございませんが、ご理解いただければ幸いです。