きねまないと

最近映画が好きになった20代が素人目線で好き勝手に映画の感想を綴るブログ。

人は『花束みたいな恋をした』と『愛がなんだ』を同じ日に見ると情緒が死ぬ

 

 

本日の映画

『花束みたいな恋をした』と『愛がなんだ』を同日に観ると死ぬぞって話をします。

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Source: https://www.fashion-press.net/news/55050

普通に『花束みたいな恋をした』の感想を読みたい人とかは『邦キチ』とかを読んだ方がいいと思います……。

 

 

この2作を1日で観るやつはバカ

いきなりイキったフランス在住の自由人みたいなタイトルから始めてしまいました。でも結論はこれなの。

色々話し始める前にそれぞれの作品の紹介からしていきますね。

『花束みたいな恋をした』作品紹介

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Source: https://realsound.jp/movie/2021/02/post-703919.html

そろそろ就活を控えたある日、大学生の有村架純)は終電を逃してしまう。たまたま同じく終電を逃した同い年の菅田将暉)と一緒に居酒屋に行き、二人はそこで互いの趣味がかなり似通っていることで大盛り上がりする。

その後、何回か二人でデートを重ねたのち、二人は付き合うことに。

順調に進んでいった二人の関係性だったが、絹は就職活動がうまくいかずに悩んでしまう。麦は趣味の絵を活かした職に就きたいと思っており、就活がうまくいかない絹を一生懸命励ましていた。

しかし、ある日無理の限界を超えた絹を見て、麦は一緒に住もうと提案し、二人は同棲生活を始めるも、しばらくして麦の父親は「働く気もなく、実家に帰ってくる気もないのであれば仕送りは止める」と言われ、二人は生活資金に困窮することになる。

そして麦は周りから遅れをとったものの就職することを決意するのだが……。

 

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『愛がなんだ』作品紹介

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Source: https://www.netflix.com/jp/title/81406366

テルコ岸井ゆきの)は友人の友人の結婚式でたまたま出会った「マモちゃん」成田凌)に依存している。

と言っても二人は付き合っていない。マモちゃんことマモルはテルコを都合のいい存在くらいにしか認識をしておらず、テルコはそれでもマモちゃんから連絡があればそれで良い。マモルを中心とした生活のために仕事ではミスを繰り返し、遂にはクビになってしまう。

しかしそれと同時にマモルはテルコに頻繁に連絡をしてくるようになり、テルコは「これはもう付き合ってるよね?」と期待してしまい、しまいには「仕事運と恋愛運が反比例するタイプなんだよね」と周囲に言ってしまう始末。

しかし、いきなりマモルから家を出ていけと言われ、それ以来マモルからの連絡は途絶えてしまい、テルコはいきなりどん底へと突き落とされる。

何ヶ月も連絡がなかったのち、マモルからまたいきなり連絡が来る。せっかく仕事の面接中だったのにも関わらずテルコは面接を抜け出してマモルの元へと駆け出していく。

しかしそこで待っていたのはマモルだけではなく、見た目が派手な女性、すみれ(江原のりこ)もいて……。

 

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恋愛映画がこの世で一番怖い映画ジャンル

まずこの2作をなんで同じ日に観ようと思ったんかなと私は過去の自分を問い詰めたいっすね。マジで1作で十分な破壊力あるから。2作見たらマジで死ぬから。

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Source: https://realsound.jp/movie/2021/02/post-703919.html

『花束みたいな恋をした』なんすけど、「う、うわぁ……」って声に出るほどなんかありそ〜〜いそう〜〜みたいなカップルで、ていうか、自分これやったことありますわ〜〜みたいな場面の連続だったりして、そりゃ観た人がどいつもこいつも自分語りするわな!!!みたいな感じでもう幸せパートからえぐいっていうか。恋愛あんまりわかんねえな〜と思ってる私からしても「いやこれはなんか友達の延長線上でリアルすぎてわかる!!!!」ってなったんで、恋愛とか恋愛映画とかがあんまり好きじゃない方でもある意味同じくらい楽しめると思います。キャラクターが生きてる感じなんですよね。例えば麦くんの先輩とか、男子から見ると憧れの先輩だけど、女子から見るとDVとかする最低な人みたいな、そういうの男女逆でも全然あると思うんですよ。ある立場から見るとすごくいい人だけど、こっちから見ると最低だよね、みたいな。そういうキャラクターがわかりやすく悪い人とかいい人とかじゃない描かれ方をするし、そのディテールが作り込まれすぎてて「いる、こういう人、いる!」ってなるんで、マジでめっちゃリアルですよね、、、。

そんでその幸せパートを超えてやってくるすれ違い期ね……。ていうかこの映画恋愛映画の皮を被った人とのほろ苦い別れ映画なんすよね!!!恋愛映画ってなんかうまくいくか片っぽ死ぬかの二択だと思うんすけど(なんでなんだろう、でもそうですよね)、この映画は新しい恋愛映画の可能性っていうか、恋愛映画というよりももっと人と人との出会いと別れ映画なんですよ。で、その上で出会いの四倍くらい丁寧に別れに至るまでを描くから怖いんですよ。だって、出会いの描きこみ方のていねいさ異常っすよ???

普段恋愛映画を『午前0時、キスしにきてよ』とかの漫画実写映画ばっか観てる人間から言わせてもらうともうその出会いの部分だけで1本映画撮れるくらい濃密なんすよ*1!!!漫画実写映画の薄さというか逆に詰めるところのベクトルが全然ちげえんだなっていう事実をあらためて感じさせられるようなそんな一本でしたね。だって幸せパートで出てくる海のシーンですらちょっと不穏感漂わせてくるくらいの濃密さですよ?何麦くん勝手に絹ちゃん置いてどっか行ってんだよ。お前のそういうところがさ〜、いやなんでもないよ。。。

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Source: https://moviewalker.jp/news/article/1010344/

そんでその四倍の濃さで別れを描くんで、もう辛い。麦くんか絹ちゃんかでいうと多分絹ちゃんに感情移入させられるような作り方で映画自体は作られてると思うんですけど、なんだろう、例えるなら大学の同級生同士が付き合ってて、どっちのこともよく知ってるからあんまり悪く言えないけど、強いていうなら比べるとより仲良かった彼女の方の肩をもつかもな、くらいの熱量で見ちゃうんですよね。他人だけど放っておけないっていうか。

そんでもう途中で出てくるケンカのシーンで、絹ちゃんが「“じゃあ“なら(来なくて)いいよ!!」っていうシーンがあるんですけど、もうほんと、それな〜〜〜!!!!ですよね!わかんない、世の中には彼女に対してこう思ってる人もいると思うんですけど、私もつい最近同じことをずっと彼氏に思ってて、「これ思ってるの私だけじゃなかったんだ〜〜!!!」と思って俄然絹ちゃんを応援してしまう。

しかし、仕事が終わってできた自由時間にパズドラしかできなくなってしまう麦くんの姿を見て自分を重ね合わせてしまい、「そう、そうなんだよ……!!俺、もっとやれてたはずなのに今じゃもうダラダラとスマホを見ることしかできねえんだ……」

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と自分のことを嫌いになったり、なんだこの映画は。人の心を(全く予想していなかった方向に)揺さぶりすぎるだろう。いや本当に、就職して社会人になってから全然ブログ更新できなくて永遠とTwitterだけをしてしまう自分の姿をあの麦くんの姿にみましたよ。。。。

そんでさ、もう結婚式の後に別れようってお互いそれぞれ思ってて、二人でよく行ったファミレスに行って、で、実際別れ話をするんだけど、その直前に最後だからこそ楽しくいたいって思って、カラオケとかですごく楽しんじゃって、まるであの幸せパートのような時を過ごしちゃったから、麦くんは「結婚しよう」とか意味わからないことまた言い出すわけですけど、「いやこれもよく聞くヤツ〜〜〜」と初めて見る光景なのにデジャブすごすぎて頭くらっくらしましたよね。

男とか女とか関係ないと思うんですけど、割と一定数いる「結婚がなんとかしてくれる」と思ってる層……。私はね、結婚こそ「この人じゃないとだめだ」というか、「この人との結婚なら楽しく生きていけそうだな」と思える人とじゃないとしちゃいけないと思ってるんで、現状うまくいってないけど、結婚すればどうにかなるよ理論を持ってる人とはま〜じで相容れないので絹ちゃん異常に麦くんに引きましたね……。いや、お前なんかと結婚しても絶対お前「俺仕事で忙しいから」とか言って保護者会とか一回もこない奴だろ。三者面談とかもこないだろとか思っちゃいましたもんね。

でもその後、この映画が良かったのはきちんと別れてからの二人の関係が描かれることで、その奇妙な二人の同棲からの同居生活の様子とかも丁寧に描かれてて、このへんもめっちゃリアルでよかったですね。リアルというか、「ちゃんと描いている」とでもいうんですかね。一緒に住んでた二人がもう終わりだから、じゃあね!みたいなこと言ってもいきなり関係を絶てるわけでもないので、引っ越しまではこういうことがあって、というちゃんとそこを描いてくれる誠実さがよかったです。個人的には「実際浮気したことあるでしょ」のくだりとかめっちゃ良かったですね。別れたからできる話というか。

まぁそんな感じで感情をジェットコースター級に揺さぶらされながらも、私はかなり非常に『花束みたいな恋をした』に満足してめっちゃほっこりしていたんですね。まぁホラーはホラーだったんですけど……。マジでこれ観たの結構前なのにこの熱量で語れるくらいにはマジでガツンときた一本だったんで。

 

で、私のこのなんかほろ苦くも気持ちがいいムードをぶち壊してくれた(褒めてる)のが『愛がなんだ』です。

 

『愛がなんだ』はマジでアロマンティックとかアセクシャルとかデミセクシャルとかデミロマンティックとかが観たら泡吹いて倒れる映画でした*2。実際私はマジで誰にも感情移入できなくて死んだよ。

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Source: https://www.cinra.net/news/20190418-aigananda

まず主人公のテルコ〜〜〜〜!!!!!お、お前ーーーッ!!!!恋愛を中心に生きている人間を否定する気はねえけど、他人に迷惑をだいぶかけるのはやめろーーーー!!!!!仕事クビになる前にお前で勝手にやめろーーーー!!!会社にぶら下がってんじゃねえーーーーー!!!!組織に所属している以上せめてマイナスはやめな……。と思ってしまった……。(堂々とスマホ見るくだりやばすぎて学生時代の舐め腐ったバイトの後輩思い出して私は無事に死にました。)

そんでお前男の趣味悪すぎんだろ?!?!目を覚ましな?!?!いくら見た目が成田凌でもお前を呼びつけておいて深夜に家をほっぽり出すメンヘラなんかこっちから願い下げよ死になさい。

てかもうオチの話するけど、テルコの家にマモルが来て、「俺、山田さん(テルコのこと)の気持ち考えたことなかった」とか言い出した時怖すぎて「え、こいつ夜中に呼びつけて飯まで作ってもらって、性欲余った時にセックスの相手までしてもらってた相手の気持ち今までだいぶ時間あったけど1回も考えたことなかったの??????????????????????」ってなって怖くなっちゃって「怖いよーーーー!!怖いよーーーーーー!!!ママーーーー!!!!!!」ってなっちゃいましたね……。でも世の中にはそういう人間がたくさんいるんだよって聞いて怖いなって思ってます。みんな、自分のことを大切にしてくれる人と一緒にいようね……。

マジでいつもだったら「こいつ成田凌の顔だから許されているものを」とか言えるんですけど、あまりにもクズ男ポイントが高すぎて「いや成田凌でも全然許せねえよ。お前なんなんだよ。俺の『逃げるは恥だが役に立つ』の成田凌かえせよ」ってブチギレちゃったよ*3

後まじで出てくる人間がマジでほとんどみんな精神が病んでいるのか?みたいな人間しか出て来なくて怖すぎて泣いちゃうかと思った。みんな恋愛と性欲に関して倫理観がガバガバなの?これがヘテロロマンティックでヘテロセクシュアルの人の世界なの?怖い……。

唯一マジで助かったのはマモルが惚れる江口のりこさん演じるすみれだけでしたね……。すみれは見た目こそすごい奇抜なんですけど、言ってることが一人唯一まともで「すごい、この人当たり前のこと言ってるだけなのにこの映画だとすごく聖人に見えるし、すごく浮いてる……」と思って面白かったですね……。

にしてもマジでマモルがクズすぎて1ミリも救えなくて、この場合普通だったら「テルコ可哀想!!!私はテルコの味方だからね!!」となってもよさそうなんですが、マジでテルコも恋愛サイコパスなので全然味方になれないし、むしろテルコの方が怖すぎて「マモル早くにげて!!!!」ってなりました。マジでこの映画ほんとにほとんど誰にも共感できなくて共感できないできないホラーでした。

そのさっき触れた最後のオチのシーンでマモルがテルコの家に来るシーンで「山田さんが俺のこと好きだったらどうしようと思って。そうだったらもうこういう会ったりするのやめよ」とかあのクズ男は抜かすんですけど(マジで怖いよね、好きじゃなかったらここまでしなくね?てかそれすらわかってなかったってどんだけ関心ねえんだこの男は。お前の視力と聴力は視力ない人とか聴力ない人に分け与えた方がいいんじゃねえのか)、テルコは「マモちゃんのこと好きなわけないじゃん〜」と返すんですよね……。

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あ〜やっぱりマモルがクズすぎて百年の恋も冷めたわみたいなこと?覚めただっけわからんけどとにかくそれ???さすがのテルコもやってらんねーわ!いね!!!!みたいなことなの????

って思ってたらこれ、「マモちゃんが“マモちゃんを好きな私“にそばに居られると困るからもう会わないっていうなら私“マモちゃんのことなんか好きじゃない“私になるよ」って話だって知った時まじで怖すぎて尿漏らしたよ私は。

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ほんとまじで『花束みたいな恋をした』ぐらいで「これホラー映画じゃん」とか言ってすみませんでした……。本物のホラーはこっちでした……。ほんとすみませんでした……。もう岸井ゆきのが今『恋せぬふたり』出てるけど今でもテルコがよぎって「いやこれ恋できないんじゃなくて、もしかしてマモルが死んでしまって正気を失った後にマモルの記憶を全て失ったけどマモルに執着しすぎてそれ以外の男になんの興味も無くなったテルコなんじゃない……??」って思うくらいにはマジで『愛がなんだ』が私に与えた傷はでかいからね(褒めてる)……。

 

まとめ

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Source: https://shintokorozawa.parco.jp/shopnews/?id=3332

というわけで、1日で「主人公二人の友達になってしまうような恋愛映画」と「主人公二人ともやべえから関わりたくねえと思うような恋愛映画」を観て情緒をぶっ壊したという話でした。

2作品とも同じく恋愛のうまくいかなさみたいなものを描いているはずなのにテーマも内容も着地の仕方とかも全然違って、でもそれぞれリアルで面白かったですね。

この2作品を相対的に見ると『花束みたいな恋をした』の方が精神的ダメージは軽く済むんですけど、それでも全然ダメージ重いですし、全然カップルで観るのおすすめしないですね。ちなみ私はマジでこれを観てから「まぁでも恋人なんてもんはいつか別れが訪れるものだし……」みたいななんか諸行無常の精神で生きるようになりましたね……。無駄に達観した人間になってしまった……。

その後『愛がなんだ』を観て、マジで恋愛って1ミリもプラスがねえ!!!!!!!!!となりましたね……。(過言)恋愛って気持ちに余裕がある人のする余興というか、趣味だと思ってないとマジで呪いになる…………。気をつけよ。。。って感じですね……。恋愛にすべてを持っていかれない人間になるべく、私は恋愛以外の趣味をどんどん鍛えていこ……と心に誓いました……。っていうか一人でも生きて行ける人間にならねばと強く思いました……。

いや、これ恋愛映画の感想?

 

 

『愛がなんだ』の今泉力哉監督の他の作品のおすすめはこちらです。

 

slhukss1.hatenablog.com

 

有村架純菅田将暉の共演作

 

slhukss1.hatenablog.com

 

 

*1:『午前0時、キスしにきてよ』…主演:橋本環奈、片寄涼太による同名少女漫画が原作の恋愛映画。成人してる芸能人が未成年に手を出す時点で正気とは思えないのですが、この成人高校生のパンツ(彼女ではなく誰でも良い)見て喜んでいたりするのでマジで救えませんでした。

*2:アロマンティック…恋愛をしない人、恋愛感情というものが自分自身にはない人を指す。

アセクシャル…性的接触をしたいと思わない人、性欲がない人を指す。

デミセクシュアル…あまり性欲が湧かない人。信頼できる特定の誰かにだけ性的接触を求める人。

ミロマンティック…あまり恋愛感情が湧かないひと。信頼できる特定の誰かにだけ恋をする人。

www.vogue.co.jp

*3:逃げるは恥だが役に立つ』…主演:新垣結衣星野源による同名少女漫画を原作とした連続ドラマ。成田凌新垣結衣の姉の働く職場にいる好青年の役。