きねまないと

最近映画が好きになった20代が素人目線で好き勝手に映画の感想を綴るブログ。

私たちはもう「真実」を知る方法を失った。『グレート・ハック:SNS史上最悪のスキャンダル』

 

 

本日の映画

今回はNetflixオリジナルドキュメンタリー映画『The Great Hack』についてお話ししていきます。

政治やSNSについては全く専門家ではありませんのであしからず。

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source:https://www.netflix.com/title/80117542

 

 

あらすじ

2016年のアメリカ大統領選挙において、イギリスの企業ケンブリッジアナリティカ」が不正にFacebookのユーザー情報を利用し、票を誘導したのではないかという疑いを持った1人の大学教授がケンブリッジアナリティカに自分のユーザー情報を開示するように求めた裁判のゆくえを追ったドキュメンタリー。

 

詳しくはこちらをご覧ください。

www.youtube.com

 

あなたは今Facebookに関する報道が過熱していることをご存知ですか

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source:https://newsroom.fb.com/news/2019/04/f8-2019-day-1/

日本のニュースでFacebookがどれだけ騒がれているのか私にはわかりませんが、今Facebookはかなり危機的な状況を迎えています。

ちょっとググってみたんですが、Facebookの話は今「リブラ」が日本語では主に報道されているみたいですね。「リブラ」の話だけだと「私仮想通貨とか興味ないしどうでもいいや」ってなっちゃいそう。実際私も日本にいたときそんな感じでした。

実は今Facebookのニュースで一番騒がれているのが政治広告の取り扱われ方です。この報道がダイレクトに今回取り扱う『グレート・ハック』の題材に直結するのです。

日本語でググったらほぼロイターしかこのニュース報じてないじゃないか。驚き。

jp.reuters.com

もう今月に入ってからもすごいです。Facebookに関しての報道が。日本だともう誰がFacebookなんか使ってんのよってくらい人気ないからあんまり報道がないのかもしれませんね。

www.politico.com

 そんなわけで、Facebookのこの一連の政治広告問題について詳しく知りたいよって方はWikipediaを~と思ったらこれも日本語のページないし!

en.wikipedia.org

日本人どれだけFacebookに関心がないんだ。わかるけど。私も2~3年放置してたし…わかるが…。BBCジャパンが報じていたので(1年半前)、こちらをご確認くださいませ。

www.bbc.com

というわけで、この一連の流れがあって、最近報道も過熱してるし観てみるかー、というわけでNetflixオリジナル作品の『グレート・ハック』を観た次第でした。

 

データと民主主義

この世の中で最も価値のあるもの

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source:https://fra.europa.eu/en/news/2017/strengthening-modern-human-right-data-protection-eu

 みなさんはこの世で一番価値があるものは何だと思いますか。お金?石油?時間?愛?いろいろと意見があると思いますが、世の中的に今一番価値があるものとして言われているものの一つに「データ」があります。

ここで言う「データ」とは、たとえばあなたの年齢、誕生日、出身地、そして趣味嗜好、家族のつながり…など、あなたを構成する「個人情報」のことですね。

まさに今回の映画ではケンブリッジ・アナリティカ(予告の字幕に従い、以下CA社と表記)がその「データ」を選挙に不正利用したという話です。

この話は一番身近なところで言うと、ターゲティング広告と似ています。

prebell.so-net.ne.jp

ターゲティング広告とは平たく言えば、私たちの閲覧したWebsiteや購入したものを使って、私たちの趣味嗜好に合わせて表示される広告のことですね。最近Websiteにいくと「Cookieを利用します」という文言が現れますが、あれがターゲティング広告を許可するものです。

Cookieを利用します、に対して「許可」を選んでいるために私たちはこの情報が広告として利用されるんだな、とわかりますが、今回の映画ではCA社がユーザーに対して通知を行わずにこのデータを利用したという話なのです。しかもアメリカの大統領選挙で…。

 

 

2016年11月9日

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source:https://www.youtube.com/watch?v=4EsLe8oEyCA

 私は一生この日付を忘れることはないでしょう。そう、ドナルド・トランプが米国大統領選挙で勝利した日です。

slhukss1.hatenablog.com

 ちょうどこんな記事を書いてますね、私。内容は全く関係ないんですけれども。

さて、この映画を観るにあたってはこちらの映画も一緒に観ていただきたいです。

www.youtube.com

マイケル・ムーア監督による『華氏119』です。この映画を観れば、アメリカの大統領選はどうしてあの結果を生まれたのか、そしてアメリカという国はあの大統領選でどれだけの変化をもたらされたのかということを少し理解することができるかと思います。そして、こちらの映画を観てから今回の映画を観ると、CA社がしでかしたことの重大性がさらに理解いただけるかと思います。そういえばマイケル・ムーアはCA社についてはなんか言ってるのかね。

私はこちらの映画についてのラジオを以前に録っています。

radiotalk.jp

このラジオで私が言いたかったのは、私たちはちゃんと選挙に行って自分が思う正しい政治をしてくれる人を選ぼうじゃん!ってことだったんですが、今回の『グレート・ハック』を観て、私たちの自由民主主義はすでに崩壊していたのだということを知りました。今の状況のまま選挙に行ったところで私たちはもう国を変えることはできないかもしれないですね。

 

私たちがSNSで奪われたのは何か

「真実」と「嘘」に何の意味があるのだろうか

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 source:https://www.walmart.com/ip/Big-Bang-Theory-No-Truth-Internet-T-Shirt/197364928

 さて、ようやくこの映画のお話をしていきますが、この映画がとにかく恐ろしいのはこれがフィクションではなく、私たちが生きているこの現実世界で実際に起きたという話だということです。

このドキュメンタリーで語られていることは、あまりにも壮大なうえに、そんなことをしたらこの世の「常識」が変わってしまうじゃないか、という話なので、見ている途中で「あれ?これフィクションなんだっけ?」と思うかもしれません。でも残念なことにこの話は実在の話なのです。

何が怖いって、この話「アメリカだから」起きた話じゃないんです。CA社はほかの国々で何回も何回もテストを重ねて、それがうまくいったからよっしゃじゃあBrexitと大統領選で使ってみましょうか、ということでやってみたというわけで、これってSNSがある国だったらどこでも起きてしまうという話なんですよね。

で、じゃあCA社は何をしたのか、というと、Facebookに政治広告を流したのです。しかもこれが誰彼かまわずではなく、「データ」を使って一部の人間に流したわけですね。この一部の人間が重要になってくるわけですが…。

ではどんな人が選ばれたのかと言いますと、「特定の政治的主張がない人」=「票を誘導しやすい人」です。そのような人々を彼らはFacebookのユーザーデータを使って見つけ出し、彼らに対してトランプにとって有利な政治広告を流したとされています。彼らにそのような広告を流すことで、「トランプに投票しなければ自分の身が危険になる」と思わせ、彼らはトランプ勝利に一定の貢献をもたらした、とされています。

もうこんなことをされたら、正直何が「真実」で何が「嘘」かなんてわかりようがないですね。15年ほど前は「インターネットにあることは全部うそだから信じてはいけないよ」なんていう意見がほとんどだったのに、いまや知らないことがあればインターネットで検索して知る時代ですからね。こんなことされたら私たちにとっての「本当」って、人が簡単にやりたいように書換え可能になってしまってますよね。

 

私たちが今できることは

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source:https://www.thewrap.com/the-great-hack-film-review-facebook-cambridge-analytica-netflix/

 この映画を通して私が思ったのは、私たちのSNSって自分たちが投稿しているときに思っている以上に価値があるのだな、ということです。いくら匿名性があるといったって、いざとなったら企業はIPアドレスを調べることができるんだからどこの誰なのかは一瞬でばれるし、そこからこいつの趣味嗜好はこれで家族構成はこんな感じか、この辺に住んでるんだな、って一瞬でアクセスできちゃうかもしれないってことで、それを今は悪用されているのが顕在化していないだけで、もしかしたら日本でもとんでもなく悪用されているかもしれません。

私たちが何気なく「今日はアイスを食べた」「今日も飼い犬がかわいい」「仕事疲れた」「恋人と喧嘩した」とか何気ないことを投稿している場所が、実は国を大きく揺るがすとんでもない場所なのかもしれません。

では私たちは何をすべきなのか、この映画が主張するのはそれです。私たちが今後しなければいけないことは何か。ぜひこの映画を観て今後のSNS、そしてインターネットとの付き合い方を考えていただきたいな、と思います。

 

終わりに

SNSは真実を写さない

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source:https://www.netflix.com/title/81035279

 最後に別のNetflixオリジナルドキュメンタリー映画をご紹介します。『FYRE 夢に終わった史上最高のパーティーです。

www.youtube.com

これがすごいのは、チケットがインスタグラムのイメージだけでばかみたいに売れたという話です。実際には何も実態が伴わないものをインスタグラムを使って「理想」のイメージだけを客に植えつけ、チケットを売ったのです。つまりこれはインスタグラムには「嘘」だけが投稿され、その嘘を素晴らしくインスタ映えさせて、とんでもない詐欺が実行されたという話です。

この映画を観ると、SNSというのは人が見せたい部分だけを見せる場所なのだということを改めて知ることができます。SNSって人と簡単に繋がれるし、暇にはもってこいだし、伝えたいことを手軽に全世界発信できるので、もちろん良いものではあるのですが、100%は信用できないということを私たちは改めて知っておく必要があると思います。

ちなみに上で紹介した『FYRE』、こんなことが現実に起こったのかと度肝を抜かされるほどひどい話で、悲惨な話なのにちょっと可笑しくなってしまいました。映画自体の出来もすごく良いのでおすすめです。

 

『グレート・ハック』の映画的評価について

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source:https://www.vox.com/culture/2019/7/25/8930283/great-hack-review-netflix-facebook-cambridge-analytica 

 すでに『グレート・ハック』から考えるSNSとの付き合い方については述べましたが、映画的評価についてはお話ししていなかったので、最後に映画としてどう思ったのかということを述べます。

この作品は映画としても構成がよくできていると思います。まず上図の人物、ブリタニー・カイザーが一番初めに出てくるわけですが、これは彼女がこの事件の最重要人物ながらも誰にもそれまで知られていなかったということをうまく映していると思っています。

そしてそこから今作のいわゆる「主役」である大学教授が語りを始めるわけですが、これも彼が講義を行っているようなスタイルで始まるので、語り部としてこれ以上ないというほどわかりやすく今作が切り込んでいく問題点を説明してくれます。

また、画面もSNSをうまく表現していて、先日ご紹介した『YESTERDAY』とは雲泥の差で最高でした。そうだよ、これが観たかったんだ私は。

事実をどうやって映画として「劇的に」見せるか(魅せるか)、という点でこの映画は本当に優秀と思います。

ドキュメンタリー映画って退屈そうに見えるんですけど、「警察24時」が面白いんだからドキュメンタリー映画って面白いに決まってんだよな…!って感じなんすよ…。(すみません「警察24時」が嫌いな人はすみませんほんとにごめんなさい)

なのでドキュメンタリー映画にはまだ手を出したことがないよという方はぜひ今作おすすめですので観てみてくださいませ。

 

おまけ

 「母親に髪を切らせて、”ほら、めっちゃイケメンになった"って言われたとき #ザッカーバーグ

このブログを書くきっかけはイギリスのTwitterトレンドにザッカーバーグが入ってたからだったんですが、そこで最初に見つけたツイートこれだったからつい笑ってしまった。こんなんずるいよ。

 

追記(2019/10/24) ザッカーバーグ氏への米公聴会

ちょうどこれを書き上げた後にザッカーバーグを迎えてのアメリカの公聴会が開かれました。Goodタイミングでした。

例のごとく日本語で検索した結果は「リブラ」に関するニュースばかりですが(リブラに関する公聴会なので当り前ですが)、世界的に今注目を集めるのはこの人!

www.itmedia.co.jp

アレクサンドリア・オカシオ=コルテスさん!名前のイニシャルからAOCとも呼ばれています。この人のかっこよさはもうWikipediaやすでにご紹介した『華氏119』からもわかっていただけるかと思うのでほんと大注目してください!

ja.wikipedia.org

そんなアレクサンドリアさんの超しびれるザッカーバーグへの尋問の様子はこちら。(日本語訳ありのものを探せませんでした…。今度書き起こしとかする余裕があればやってみます)

www.youtube.com

ガラスの天井を壊すのはこの人かもしれない、というかこの人であってほしいです。